かじろうもん、ほじろうもん。


シンガポール市内のバスターミナルに降り立ち、俺は歩いて宿探しを開始した。
15分程歩いてバックパッカーズ(バックパッカー向けの安宿)を見つけたので、入って料金と部屋を見せてもらった。
「今空いてるのは12ドルのベッドだよ。」
「部屋を見せてくれ」
「部屋っていうか・・・・・・屋上なんだけどね


!?

屋上!?屋上だと?どんな環境やねん!!
しかし興味がわいたので見せてもらうことにした。
行ってみると、本当に普通の雑居ビルの屋上に野ざらしでベッドが置いてあるだけだった。

え・・・?これ・・・え??
雨とか降ったらどうすんの??風とか虫とかやばいでしょこれ?お前ギャグセン高すぎじゃね??
俺が驚いて固まっていると、宿の主人は肩をすくめて
「・・・これしか空いてないんだ。」
と言った。
どう良く捉えてもこれはちょっと良い野宿である。シンガポールまで来て野宿することもあるまい。俺がシンガポールドルの両替を忘れたと言って宿を出た。

そこから20分程歩き、リトル・インディアというインド人街の一角にビジネスホテル風のバックパッカーズを発見したので、入ってみた。
中は日本のビジネスホテルとほぼ同じ感じでとても清潔だったので、チェックインした。一泊20シンガポールドル(約1400円)という値段は、今まで泊まっていた宿の値段が500円~600円だったことからすると信じられない程高いのだが、ここはシンガポールなのでそんなことで不満をたれていても仕方がない。とりあえず部屋に入り、自分のベッドを探して荷物を置き、一眠りすることにした。

起きたら、夜の8時を過ぎていた。本格的な街歩きは明日からに回し、今日はリトル・インディア周辺だけを軽く見てまわることにした。
チャイナタウンが中国人だらけなのと同じように、ここもまたインド人だらけだった。頭にターバンを巻いていたり、眉間に赤い点があったり。
インド人街を歩いて思ったことは、インド人は「強め」な人達だな、ということだ。体はガッシリしており顔の彫りは深く、黒に限り無く近い茶色をした顔にある大きな目はギラギラして真っ直ぐ前を見据えている。目が合うだけで「見つめられている」という印象を受ける程に、インド人達は「強め」な雰囲気を醸し出している。人々からその「強め」のオーラのようなものが立ち上っていて、街がそれで充満しているようにも感じる。シンガポールのインド人街でこれなのだから、インド本国ではどれほどのパワーが溢れているのだろうか。巨大なパワーの集合体に押し潰されて、歩くこともままならないのではないだろうか。俺はまだ見ぬインドに虚構の恐れを勝手に抱き、勝手にビビリつつも、押し寄せてくるパワーを押しのけながら街を歩いた。

腹が減ったので食堂に入り、マレー風焼き飯の「ナシ・ゴレン」を食べた。うまかったが、5ドル(約350円)もした。マレーシアならば、100円で食える飯だ。この国の物価に慣れるには、もう少し時間がかかりそうだ。

翌日は、朝起きるとまずは宿を移した。この宿は、応対は丁寧だし清潔でいいのだが、本当にビジネスホテルに泊まっているような無機質さがあり、なんとなく肌に合わなかった。近くに丁度欧米風のバックパッカーズがあったので、そこでベッドを借りることにした。
こちらは大部屋にたくさんの2段ベッドを敷き詰めた宿で、共同ルームには欧米人がうじゃうじゃ居て寝そべりながら会話したり食事をしたり居眠りしたり映画を見たりゲームをしたり、それぞれが思い思いに過ごしていた。やはりこういう方が落ち着く。
部屋に荷物を置き、早速街歩きを開始した。
ツーリストインフォメーションで地図をもらい、とりあえずはマーライオンのある「マーライオン・パーク」へ向かって適当に曲がりながら歩くことにした。
街は、まるで西新宿の高層ビル群を歩いているようなジャングルっぷりであった。道はきれいで滑らかに舗装されているし、なんと人々が交通ルールを守っているのだ。まるまる1ヶ月ぶりに見る「アジア人が赤信号で止まっている姿」には、得も言われぬ感慨があった。
街も人々も、内的にも外的にも「きれい」だった。ここは「何でもある」が故に、俺の目には「何も無い」街に映る。高度であるが故に、シンプルさが失われ、街も人々も、何を考えているのかわからない。ふらっと入ったビルのイベントホールを覗くと、人々は非常に険しい顔で春巻きをかじっていた。シンガポール人は眉間に皺を寄せて春巻きをかじる文化でもあるのだろうか。本当に何を考えているのかわからない。

しばらく歩くと、マーライオンパークへ到着した。期待を込めて拝見したマーライオンには、楽譜の強弱記号で言うところのピアニッシモくらいのレベルで「あ、意外にでかいんだ」と思い、一応写真を撮ってすぐに引き返した。

マーライオン




←意外とでかいマーライオンさん。右下に小さく人が写っているので大きいのがわかる。



そこから、地下鉄でシンガポールのメインストリートである「オーチャード・ロード」へ行った。
ひと通り歩いたが、あったのはヴィトンとプラダとグッチとディオールとマックとスタバの無限ループだけだった。
一日中歩き回って疲きった体で宿に戻り、思った。




  で?     っていう

え、それだけ?終わり?なんか面白いこととか起きないの?アホな女が話しかけてきて鼻クソほじり出したりホテルの従業員にコンドームせがまれたり陽気なデブに飲みに誘われたりしないの?
どうやらこの国では、歩いているだけで面白い事がやってくる旅はできないらしい。ならば積極的に扉を叩いていこう。ガンガンいこう。自分から嵐巻き起こしていこう!飲みに誘おう!コンドームせがもう!

鼻クソほじろう!!





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