オンディーヌで手羽先を


のっそりと目を覚ました。
眠い。アリと珍走団の襲撃のせいで寝不足だ。
窓を開けて空を見ると、今にも雨がこぼれてきそうな曇り空だった。
まぁ東南アジアを旅しているのだから、海水浴をするチャンスなんて今後いくらでもあるだろう。バンコクへの帰りにプーケットでも寄れば良い。そう思い、すぐにバスでハジャイに戻った。
前と同じ宿にチェックインし、部屋でだらだらと過ごした。なぜなら俺がハジャイへ着いた頃には大粒の雨がドッシャーーと降っていたからだ。

日も暮れてきて腹が減ってきたので、仕方なく雨の中飯を食いに出かけた。
カットフルーツを売る屋台を見つけたので、パイナップルをくれと注文した。
すると、屋台のおっちゃんは氷で冷やしてあったパイナップルを一切れ取り出し、どこからか出してきたピンク色の粉をためらいもせずドッサーーーーーとまぶした。ほんの一瞬目を離した隙に。今まで屋台でフルーツを頼む時、この粉をかけられそうになったことは何度もあった。しかし俺はその度に
かけないでッ!!そのピンクの粉ッッ!!かけないでェェェッッ!!!」と涙目で阻止し続けてきた。
だっておかしいでしょ?どこにパイナップルにピンク色の粉かける習慣があるんだよ。てゆーかピンク色の粉なんてねるねるねるね以来見てねーよ。 しかしとうとうかけられてしまったようだ。もう腹を決めるしかない。食うしかない。
俺は食った。ピンク色のパイナップルを。

……



しょっぱ辛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!


なにこれぇ……
しょっぱくて辛い。しょっぱ辛い。…………しょぱらい。

そしてなによりまずい

だめだこいつら。何でも辛くすりゃいいと思ってやがる。

お口直しに、ケンタッキーに行った。タイのケンタッキーは、どのようなものなのか興味があった。
メニューを見ると、チキン4ピースにポテト、ドリンクがついて100Bだった。この旅の食事にしてはかなり贅沢であったが、とにかく早くあのミラクルパイナップルの後味を消し去りたかった。
ドリンクはアイスティーを頼んだ。
100B払い、待っていると、出てきたのは太く小さく乾燥した手羽先がコロコロと4つとポテトとペプシコーラだった。



さて。どこから突っ込むべきか。悩ましいものである。

まず、このちっちゃくて茶色い塊はなんだ?お前は誰なんだ?本当にあの「ケンタッキー・フライドチキン」のチキンなのか?俺は日本のケンタッキーのチキンのように、ギトギトで、肉厚で、手に取った瞬間に
「さぁ、どこから攻略してやろうか……フヒヒ」と嬉しくなって、顔中油まみれになりながら骨についた少しの肉さえしゃぶり尽くすあの感じが好きなのだ。
それに比べてお前はなんなんだ?完全に乾いた手羽先じゃねーかコラッ!!これじゃ食うのに2秒しかかかんねーだろうがッ!!
しかもこれでもかッ!ってくらいオレンジ色の粉かかってるしよォ……

あとなんでコーラ出てきた?
俺は確かに
「ドリンクはアイスティーで」と言ったはずだ。前にタイでマックに行った時もそうだった。

「ガイジンにはコーラ出しときゃいいでしょ」とか思ってんのかてめーら?



ナメんなよコラァ!!!誰がコーラなんか飲むか!俺はコーラ嫌いなんじゃボケ!骨溶けちゃうだろーが!!

まぁ文句ばっかり言っていても仕方がない。俺は若干の憤りと共にそのオレンジ色の乾いた手羽先にかぶりつこうとした。しかしその時、チキンの皿が乗るプレートの隅に、なぜかナイフとフォークが見えた。
周りを見渡すと、大人たちはみんな一歩間違えた貴族のようにナイフとフォークで手羽先から肉をちまちま切り出して食っている。
もう突っ込むのは疲れたので好きにしてくれ。俺は俺の「ケンタッキーのチキンを食うときは野獣のようにしゃぶりつく」というルールに従わせてもらう。

野獣のようにしゃぶりついた。




ッ辛ぇーーーーーッッ!!!

もうだめだ!!タイに居る限りこの激辛地獄からは逃げられない。ここに俺の居場所はもうない。
俺は翌日のマレーシア行きを心に誓った。





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