ビフォア テイクオフ


2009年12月16日。
俺は成田空港で、友人にメールを打った。
「ほんじゃあ、ちょっくら行ってくるわ。日本はまかせた!!!
携帯を握り締め、俺は「期待と不安がないまぜになったような」という言葉では70%くらいしか表せないような、複雑な気持ちでいた。
ここからまずバンコクへ飛ぶ。飛行機がバンコクの空港に着いたら、あとは3ヶ月まるまる自由行動だ。何のプランもない。
俺はどんな旅ができるんだろう?というか生きて帰れるのだろうか?飯はうまいのか?宿はキレイなのか?…………
と言ってももう後戻りはできない。友達には「3ヶ月アジアを旅してくるぜ!!」とかっこつけて言い放ってきたのだから。
ここで怖気づいたら、ネットカフェに引きこもって他の旅行記サイトをチェックしまくり、旅先での話を捏造することに3ヶ月費やさねばならなくなる。
そんなのはイヤだ!だから行くのだ。
行くんだけど、不安だから色んなことを考える。
パスポートとか失くしたら嫌だなぁ……
やっぱ向こうは暑いのかなぁ……
英語とか喋れないけど大丈夫かなぁ……ちなみに俺の英語力はたぶん、並の中学生くらい。つまり勉強してる中学生よりは下ということだ。
3ヶ月後日本に帰ってきたら、日本はどーなってるのかなぁ……
みんな俺を覚えててくれるかなぁ…… 家に帰って、今年8歳になったかわいい妹に、
「ねぇママ、このおじちゃんだれ?すごく汚くて臭いんだけど、家に入れていいの?」なんて言われたら俺はショックで痙攣してしまうだろう。



「ピンポーーーン ノースウェスト航空バンコク行きにご搭乗のお客様、8番の搭乗口にて搭乗を開始いたします」
くだらないことを考えるのはもうやめだ。今はもう、何も考えずに飛行機に乗ってしまおう……
あとのことは、そのとき考えればいい……
そうして俺は、まだ見ぬアジアへと旅立っていった。





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